多奈崎市長選 「市民派」アピールで野党系三選 与党は総力戦も…
2019年10月14日 17時40分配信
13日投開票の多奈崎市長選挙は、進歩党など野党が支援した岩田誠司氏(57)が、国民・明青両党の推薦を受ける竹村直人氏(34)など3氏を破り、3選を果たした。岩田氏と竹村氏の票差は僅か309票で、歴史に残る与野党対決となった。
「市民が主役」で支持拡大 草の根選挙、党派を超えて
多奈崎市三本松の岩田誠司氏の事務所に当選確実の一報が飛び込むと、駆けつけた支持者らが喜びを分かち合った。接戦を制した岩田氏は「改革を止めてはならないという訴えに共感していただいた。これからも市民の皆様に寄り添って市政を前へ進めていく」と決意を新たにした。
与党推薦という強力な布陣を相手に「市民派」を強調して挑んだ選挙戦。一時は対立候補に先行を許したが、持ち前の小回りと演説力で切り抜けた。連日、自転車で市内を回って支持を訴え、選挙戦最終日は主に市内中心部で50ヶ所以上の街頭演説を実施した。 進歩党など野党からも支援を受け、玉野良美進歩党代表も多奈崎入りした。「今は市政を転換すべきでない」と国民党を離党して岩田氏支援を表明する市議もいた。「政党や団体を超えて応援していただいた。市政に保守も革新もない」。保守系も取り込んで「草の根選挙」を展開し、日に日に支援の輪は広がった。
一方で課題もある。一昨年には市議報酬削減をめぐって住民投票条例の専決処分を決め、与野党を問わず市議らから批判を浴びた。陣営幹部の進歩党関係者は「勝利といっても新人相手に薄氷の差だった。今まで以上に謙虚な市政運営に徹していただきたい」と釘を刺した。
「市政刷新」及ばず 国民幹部ら応援も接戦で苦杯
多奈崎市一番町の竹村直人氏の事務所に落選の方が入ると、駆けつけた支持者らは一様に落胆の声をあげた。竹村氏は「多くの皆様にご支援をいただきながら、期待に応えることができなかったことをおわびしたい」と敗戦の弁を述べた。
選挙戦では岩田市政からの転換を訴え「国や県と連携し、日出一元気な多奈崎をつくる」と呼びかけた。人口減少へと転じた多奈崎の現状を念頭に「子どもたちの未来に大胆な投資をする。少子化に歯止めをかける」などと打ち出したが、浸透しきれなかった。
父であり選対本部長を務めた衆議院議員の竹村寛人前国民党政調会長と二人三脚で選挙戦を駆け抜けた。選挙戦終盤には野呂明成国民党幹事長も多奈崎入りするなど、国民党は知事選並みの支援を投入するも、僅かの差で苦杯をなめた。ある市議は「ここまで手厚いサポートを受けて勝ち切れなかった。寛人氏の責任問題は逃れられなだろう」と冷ややかな目を向ける。
敗戦から一夜明けて蓮田内閣首席補佐官は「地域の政治事情が国政に影響を与えることはない」と強調したが、県庁所在地の市長選挙に蓮田氏がコメントを寄せるのは異例で、「政権は動揺している」との見方もある(国民党中堅)。今後の竹村氏をめぐっては「市長を落として国政は無いだろう」(陣営幹部)と、寛人氏の公言する国政出馬も一筋縄に行かない可能性が出てきた。